著作

めのと

めのと大

帯の言葉から
「信長も死んだ。秀吉もくたばった。家康が死ぬのも、もうすぐじゃ」
小谷城落城から大坂落城炎上まで、茶々を守り抜いた乳母・大蔵卿局が見つめた戦国の世。

帯裏から
「浅井長政の孫が徳川のお世継ぎぞ。3代将軍は浅井の外孫じゃ」
織田信長の妹・お市の方と浅井長政との娘・茶々の乳母として、小袖は小谷城に入った。
やがて城は落ち、巡り巡って豊臣秀頼の母として大坂城炎上とともに茶々が亡くなるまで、
傍に仕え、茶々を守り抜いた小袖こと大蔵卿局が、女としてみた戦国の世。
新田次郎賞受賞の気鋭が描く歴史小説。

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ブログ「松の間の床の間」から
数年前に歴史通の知人に勧められた。
「大蔵卿局って面白いよ。だれも主人公にして書いていないし」
それで、ちょっと調べてみると、大野治長の実母で、乳を与えて育てた淀殿と、実の息子が噂になるという微妙な立場。
そのうえ淀殿の生涯は、幼い頃に小谷城の落城で、父親の浅井長政と別れ、北ノ庄の落城では、母のお市の方とも別れており、乳母としては、親子を引きはがすようにして、城外に落ち延びたはずで、どういう気持ちだったのかなあと、まず興味を引かれた。
それで、ある歴史系の編集者に、書いてみたいと相談したところ、「でも大蔵卿局って、悪役ですよね」という返事。豊臣家を滅ぼした張本人ということになっているらしい。それを聞いて、むしろ気持ちが固まった。なにしろ歴史的評価の低い人こそ書きたい性分なので。
例の方広寺の釣鐘の一件で、大蔵卿局は駿府の家康のもとに釈明に行っており、それが原因で豊臣家は陥れられていくだけに、確かにキーパーソンではあるのだけれど、そんな重大事を任されるほどの女性なのだし、淀殿とは死ぬまで一緒だったのだから、主従の信頼が篤かったことはまちがいない。
本の表紙の地模様は、お市の方の肖像画(下)で、腰に巻かれている打掛の柄で、花立涌に丸に菊唐草と呼ぶ模様。表紙の上部に白があしらってあるのは、お市が着ている白い着物を表現してるらしい。
歴女に大人気の真田幸村も出てこないし、直接的な合戦シーンもないので、もしかしたら戦国ファンには物足りないかもしれないけれど、ぜひ、ご一読を。

お市

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