著作

お江 流浪の姫

ogoruro

帯から
信長の姪に生まれ、秀吉に翻弄されながらも、徳川将軍正室に上りつめた姫。水のごとくしなやかに戦乱を生き抜いた女の恋物語。

裏表紙から
近江の戦国大名浅井家に美人姉妹と名高いお茶々、お初、お江が生まれた。姫達は、伯父信長に父を滅ぼされ、信長が討ち死にした後は、猿と蔑む秀吉の庇護を受ける。やがて、勝ち気な末娘お江が、水軍の将・佐治一成に嫁ぐ……。愛する男と無理矢理引き裂かれた姫は、運命に翻弄されながらも、水の如くしなやかに生き抜いていく。熱い想いを秘め徳川将軍家正室に上りつめた女の恋物語。書き下ろし歴史小説。

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「青春と読書」1月号から一部抜粋
今回、編集者から「お江に関わる小説を書きませんか」と、声をかけてもらった時、私は迷った。ドラマの原作ではないのだから、お江の生涯すべてを書く必要はない。むしろ、どこかに的を絞った方がいい。それを、どこにすべきか。
とりあえず史実を調べているうちに、お犬の方という女性の肖像画に出会った。信長と、お市の方の妹だが、大きな目が魅力的で、現代的な美人だった。
このお犬の方の息子が、佐治一成といって、お江が最初に嫁いだ相手だ。当時十五歳の少年で、お江とは、いとこ同士にあたり、佐治家は伊勢湾を支配する水軍だった。
私は幕末の海軍を、よく小説やエッセイに書く。デビュー作は、太平洋横断航海を成し遂げた咸臨丸の話だし、坂本龍馬の海援隊についても、何度か雑誌に書いた。
それだけに戦国時代の水軍にも、前々から興味を持っていた。水軍というのは和船による海軍で、陸上の合戦のために兵馬や食料を運んだり、港を封鎖して、敵の補給路を断ったりする。そのために石火矢や火縄銃、大砲などで武装して海戦に挑む。
お犬の方の肖像画を見た時、この現代的な美人の息子なら、さぞ男前だろうと思った。そして佐治一成のキャラクターが立ち上がった。日に焼けた、りりしい顔立ちで、まだ大人になり切らない体つき。巧みに船を操り、白い下帯ひとつで、青い海に潜る。
私はお江の物語を、海の香りがする恋愛小説にしようと決めた。タイトルも波間に漂うイメージで『お江 流浪の姫』にした。(植松三十里・記)
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産経新聞1月15日関西版ogo-sankei